日経新聞によれば、金融庁は2010年3月期から有価証券報告書に役員報酬総額、支払い形態、報酬額の決定方法を掲載するよう金融商品取引法に関する内閣府令を改正する方針を固めたということです。
役員の報酬額は、定款で定められている場合を除き、株主総会で決議されなければなりません。
ただし、株主総会では取締役全員、監査役全員に支給する総額(上限額)をそれぞれ定めればよく、各取締役、各監査役に対する具体的な配分は取締役間、監査役間の協議に委ねてもよいとされています。上場会社では、各取締役の報酬額は、役員報酬規定などの内部規則による計算方法に基づき代表取締役が決定するよう取締役会で決議していることが多いと思います。
また、取締役、監査役の各報酬総額は一度株主総会で総額(上限額)を定めれば、増額しない限り、それ以降の株主総会の議案とする必要はありません。
上場会社では、定時株主総会の招集通知に添付される事業報告書に会社が支払った取締役、監査役の各報酬総額が記載されています。さらに、社外取締役、社外監査役の報酬総額が、別途記載されます。
なお、以上は日本の会社の大部分を占める監査役設置会社についてですが、委員会設置会社でも株主総会の代わりに報酬委員会が報酬を決めることなどが異なるだけでほとんど同じです。
上場会社は有価証券報告書のコーポレートガバナンスの状況の項に会社の企業統治に関する事項を具体的に、かつ、分かりやすく記載することとされています。その企業統治に関する事項として役員報酬の内容(社内取締役と社外取締役に区分した内容)が例示されていますが、強制的に記載を求められてはいません。
今回の金融庁の方針は、この役員報酬総額の記載を義務付けるものです(ただし、現状でも一般的には役員報酬の総額は有価証券報告書に記載されています)。さらに、報酬額の決定方法も有価証券報告書に記載することが義務付けられるようです。
従来から議論があった個々の役員の報酬の開示については流動的なようです。最初に述べたように株主に対してすら個々の役員の報酬の開示は義務付けられていません。
いくつかの企業では株主総会で個々の役員ごとの報酬額の開示を求める株主提案が出されたりしていますが、結局その議案は承認されず、また個々の役員の報酬額について株主から質問があっても答えていない会社が一般的です。
役員ごとに報酬額を開示するほうが株主や市場からみて望ましいとしても、強制的に開示させる制度が導入されることについては強い抵抗が予想され、実現は容易なことではないと思われます。