会社法が制定され、来年4月または5月にも施行される可能性が高まっています。今回は、従来の商法会社編ではできなかった、株式会社を設立する際に会社の仕組み(機関設計とも言われます)を自由に設定できるようになった点について報告します。
株式会社は、設立の際に定款を定めなければなりません。これは、株式会社が法人という独立した存在であるために必要不可欠なことであり、洋の東西を問いません。
この定款には、会社の基本的な仕組みが記載されています。このため、定款は会社の憲法であると表現されるのです。
しかし、従来の商法会社編(有限会社法、商法特例法も含む)では、会社の仕組みについては詳細に規制されており、定款で自由に仕組みを決める余地は非常に少ないものでした。
今回の会社法の制定により、株式会社には株主総会、取締役の設置は義務づけられていますが、取締役会等は置かなくてもいい(定款によって設置できるにとどまる)こととし、会社の規模等の実態に応じて会社の仕組みを相当程度自由につくれることとしました。つまり、一人の取締役が会社の経営を行っても適法な会社の運営だということになりました。
しかも、株式の譲渡に株主総会(もしくは取締役会)の承認が必要である会社の場合、最長で取締役の任期を10年間にすることができます。また、取締役の解任は、株主総会で過半数の賛成でできることになりましたが、定款でこの割合を引上げることもできます。
このため、ベンチャービジネスを志す方が会社を設立しようとする場合、取締役を一人、任期10年とし、取締役の解任の要件を厳しくしておけば、自分の立場を心配して他の出資者に過度な気遣いをすることなくビジネスを育てていくことが可能になります。ただし、年に1回定時株主総会を開いて決算状況を報告する等しなければなりませんし、それに先立ち監査役の監査を受けなければならないことは以前と同様です。
以上から、最もシンプルな株式会社は、(1)取締役を一人、監査役を一人とし、(2)株式の譲渡に株主総会の承認を必要とし、(3)取締役の任期を10年、と定款で定めるものです。
また、株主総会についても、定款でたとえば3日前までに通知をすると定めることができます。通知の方法についても口頭で行うことができます。このシンプルな株主総会の形式は現在の有限会社とよく似ています。ただし、有限会社は監査役をおくことが必要とはされていませんでしたが、株式会社では監査役(ただし、委員会設置会社を除く)を置かなければならないことが異なっています。
出資金の最低額がなくなったことと併せて、事業の立ち上げのために株式会社という器を十分に活用できるようになったのではないでしょうか。