平成18年に商法が改正され、外国会社の株式と日本会社の株式の交換が可能になると言われています。
これにともない、ポイズンピル(毒薬)という物騒な名前の企業防衛策の必要性について経済雑誌や新聞等で論議されています。
そこで、外国会社の株式と日本会社の株式の交換が可能になり、日本企業が外国企業に乗っ取られるというのはどういうことかを簡単に述べてみたいと思います。
会社間で行われるM&Aの方法は色々ありますが、その一つが株式交換です。
株式交換とは、買収する会社と買収される会社の株主総会で、出席株主の3分の2が賛成する特別決議を行うことにより、買収する会社が買収する会社の株式を100%取得し、買収される会社の株主の株式は自動的に買収する会社の株式に交換される方法です。
現在の会社法では、このような株式交換ができるのは日本会社間に限られることになっています。
平成18年の商法改正では、それを外国会社にも解禁して、グローバルな産業再編に対応できる「商法の現代化」をすすめることが議論されています。
10月7日の日経新聞によれば、平成18年の商法改正では、この外国会社との株式交換は見送られ、代わりに、外国会社が日本に受け皿会社を設立し、その受け皿会社と買収対象会社を合併する制度を導入する方針であるということです。
合併の場合も、株主総会の特別決議が必要です。
受け皿会社は日本法人ですから日本会社との合併は従来から可能でしたが、平成18年の商法改正では、受け皿会社に外国会社の株式を取得させ、買収対象会社の株主には外国会社の株式を取得させることが可能になっている(合併では吸収する会社の株式を交付するのが原則です)点が今回の改正点です。
合併でも株式交換でも、買収される会社の経営陣が承諾している友好的な場合には、その経営陣が多数の株主の支持を受けていることからすれば、混乱を起こすことはなく手続きが進められることも多いと言えます。
しかし、買収される会社の経営陣がこれを拒絶するという敵対的な場合、合併や株式交換を株主総会で決議または否決してもらうために、各陣営は株主からの委任状を取得する激しい争奪戦が展開されることになります。
もちろん、日本会社の株主が外国会社の株式を取得することを拒否すれば合併や株式交換によるM&Aは実現しません。
買収される日本会社の主要な株主が外国人であるとか、買収する外国会社の株式が信用性が高く容易に換金できる等の事情がないと株主総会で特別決議を得ることは容易ではないと思われます。
ところで、買収される上場会社の経営陣が買収を拒否する場合には株式公開買付け(TOB)という方法もあります。
これは、一定割合の買収対象会社の株式を買い付けるということですから、原則としてそれに見合う資金が必要になります(株式によるTOBも可能ですが、現実には容易ではありません)。
それでも、合併や株式交換ができる程度の株式さえ(賛成する委任状の取得を含めて)取得できれば、発行株式全部を取得する資金を用意しなくとも買収対象会社の株式を100%取得できることになり、このような方法で外国会社が日本会社を買収することは十分に考えられます。
証券取引法上、上場会社の株式を取得するには証券取引所で取引きを行わなければならず、証券取引所外で行うには原則としてTOBによらなければなりません。
合併や株式交換も証券取引所外で株式を取得する方法といえますが、買収する会社が個別の株主に対して行う「買付け等」にはあたらないために、TOBの対象とはなりません。
なお、冒頭で「乗っ取られる」という言葉をあえて使いましたが、非効率な企業を効率的な企業に蘇らせるための制度をつくることは決して国民の不利益になるものではないので、合理的な制度が確立されることを期待したいと思います。