経済産業省が新たな事業体の形態を認める法案を次期通常国会に提出します。
「有限責任事業組合」といい、民法上の「組合」制度に、会社の有限責任制度の利点を採り入れた制度です。法案が可決されれば、平成17年の夏にも活用できる見通しです(日本経済新聞平成17年1月4日朝刊)。
民法上の「組合」は「各当事者が出資をなして共同の事業を営む」ことの契約関係であり、大規模な建設工事でよくみられる共同事業体(ジョイントベンチャー)などがその一例です。
単独で法人格のある会社とは異なり、民法上の組合は、それぞれが独立した個人、法人が契約によってつながりあっている関係です(ちなみに、農業協同組合、生活協同組合などは特別な法律によって設立された「法人」です。)
その利点は、商法が規定するような複雑な会社統治の仕組みや、利益配分の方法をとる必要がなく、構成員間で柔軟に契約によって決められる点です。組合自体に法人格がないことから、組合の利益に課税されることがないというのもメリットです。
ところが、この組合の構成員(組合員)は、それぞれが独立した当事者であることから、組合が負った債務について、組合の財産で返済できなければ、組合員自身が自らの財産をもって返済しなければなりません。その点で複数の会社や個人が共同で事業を営もうとするときの形態として、メリットが少ないものでした。
このようなデメリットを無くするのが「有限責任事業組合」で、その名のとおり、組合員の責任を有限とする組合です。つまり、組合が負担する債務は各組合員から拠出された組合財産から弁済されればそれで足り、それ以上に組合員の個々の財産をもって弁済する責任は負いません。
利益配分の仕方など構成員間の内部的な関係を自由に決めることができるとの組合の性質はそのままなので、出資額が少なくても、アイデアや経営能力如何で、大きな利益配分を受けることも可能となります。資本力の弱い個人やベンチャー企業を含む共同事業に活用されることが期待されます。また、法案では構成員に直接課税される仕組みが適用されることとなっています。
このような制度はイギリスなどで活用されている「LLP(Limited Liability Partnership)」を参考にするもので、これと類似するものとして、法務大臣の諮問機関である法制審議会会社法部会で要綱案が策定された合同会社(仮称)(日本版LLC(Limited Liability Company))があります。これも有限責任事業組合と同じような活用が想定されていますが、こちらは法人格のある会社(有限責任)に組合の利点(内部自治原則)を生かしたものなので、法的な性格という意味で出発点が違っています。どちらが使い勝手のよい制度なのかは、税金の問題も含め、具体的な制度設計によって決まってきます。
出資者責任を有限とする組合の制度化へ
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